中毒事件の疑惑と矛盾

2010年3月27日、中国警察当局は冷凍ギョーザ中毒事件の容疑者を拘束したと、国営の新華社通信を通して発表しました。 事件の発覚から2年が経過しつつも解決の見通しが立たず、中国側の協力姿勢が問われていた矢先のニュースでした。

ただし、異例の記者会見を開き捜査状況を公表しにもかかわらず、その内容は日本での被害状況と食い違う部分が多く、とても納得できるものではありません。

また、伏せられている情報もあり、中国側は情報を小出しにしている感もあります。 これではとても解決したとは言えません。これらの疑問点をリストアップし、今後のニュースはどこを注目して見ていくべきか整理していきましょう。

まずは、2010年3月27日から順を追って中国側の発表内容をリストアップします。

中国警察当局の発表内容

2010年3月27日

  • 容疑者は元臨時従業員、呂月庭(36)
  • 動機は天洋食品の待遇や、他の従業員への不満に対する腹いせ

具体的な犯行手口や、不満の内容など詳しいことは発表されていない。
情報はすべて中国国営新華社通信からに限られている点は、情報操作とも見える。

2010年3月28日

  • 犯行に用いた注射器2本を工場内の下水管から発見した
  • 注射器にはメタミドホスが付着していたが、指紋は検出されず
  • メタミドホスは河北省の山間部で購入した

下水管からどのような状態で注射器が発見されたのか、詳細は発表されていない。
2年間、下水に浸かっていたのか、いなかったのかで、注射器の状態も変化するはず。

2010年3月29日

  • 2007年7月と8月に工場内の環境衛生班からメタミドホスを、診療所から廃棄された注射器数本を入手
  • 2007年10月から12月にかけて計3回、冷蔵保管庫で製品にメタミドホスを注射器で注入
  • 共犯はいない
  • 正社員と臨時従業員の給与や待遇の格差に不満があったと供述
  • 同社で働いていた妻の出産休暇を取得した際にボーナスが出なかったことにも不満
  • 呂容疑者は以前から捜査線上に上がっていた
  • 呂容疑者は家族に「自分がやった」と漏らしていたことが容疑者の特定につながった

ミタミドホスの入手先が変更されている。
中国側は情報操作をしているように見えるが、うまくいっていないのではないか。

2010年4月5日

  • 4月2日に中国の検察当局が呂容疑者の逮捕を承認し、警察当局が逮捕状を執行

日本人からすると「いまさら逮捕?」と感じてしまう。

※ 上記の日付は日本で報道された日付ですので、中国での発表より1日遅れになっています。

天洋食品の待遇

  • 1日10時間労働で、週休1日
  • 賃金は月額800元~1,000元(約10,800円)
  • 出来高制で、固定の基本給はなく、残業手当もない
  • 手洗いを怠ると一方的に解雇されることもあった

現在、中国人の平均収入は日本円にすると月3万円前後と言われていますから、天洋食品の待遇が良くなかったのは事実です。 容疑者の行動と共に、天洋食品の経営姿勢も問われるべきではないでしょうか。

注射器だけでは説明できない!

中国当局の発表では、メタミドホスは注射器によって注入されたとのことですが、千葉県で被害を起こした製品には穴が開いていませんでした。 これはパッケージングする前に毒が混入されたことになりますが、中国当局の発表と矛盾します。

製造日と呂容疑者の犯行時期
被害発生地兵庫千葉
袋の穴ありなし
製造日2007年10月1日2007年10月20日
犯行時期2007年10月1日2007年10月下旬

容疑者の拘束後、中国側の実験では「穴が開いていなくても針のキズからもミタミドホスが浸透する」と発表がありましたが、 日本の警察庁科学警察研究所の実験では「メタミドホスが袋の外から浸透することはないため、袋詰めされる前に混入されたと考えるのが自然」と説明しています。

単独犯とは言い切れない!

中国当局の発表では、呂容疑者の犯行は3回にわたり、犯行時期まで明らかにしていますが、ここでもつじつまの合わない点があります。

福島県で回収された餃子からは有機リン系殺虫剤ジクロルボスが検出されていますが、製造日が2007年6月3日となっています。 中国側からジクロルボスについての説明はなく、呂容疑者の自供した混入日時とは合っていません。 この点は、呂容疑者以外の犯人が存在するのではないかという新たな疑念があがっている理由になります。

2年もかかった理由が不自然!

呂容疑者は元従業員だったことから、以前から捜査線上に上がっていて、何度も事情聴取を受けていました。 にもかかわらず事件から2年経ってからの急展開には違和感があります。 中国の警察当局は、捜査対象を広げた結果、家族からの証言を得たと発表していますが、はたして2年も要するでしょうか。

しかも、複数の証人(容疑者の妻や親族、元従業員など)がいるとの発表ですから、なおさら不自然です。 最初の証言が得られた時点で拘束できたのではないでしょうか。

難航した最大の原因は初動捜査の遅れにあったと言われています。 本格的な捜査が8月の北京オリンピックの後とされているためです。 中国にとってはこのような事件はオリンピックに水をさすことになりますので、出来るだけひっそりと捜査したかったとも考えられます。

さらに、2009年の秋には、捜査指揮官の移動や、捜査態勢の縮小があったと報じられています。 時間をかけて、少しずつフェードアウトしているのではないかと疑いたくなる対応です。

中国側がもっと誠実に協力する意思があれば、ここまで長期化することはなかったのではないはずです。

※ 上記の情報は、読売新聞、日本経済新聞より収集し、私の感想を加えて編集しています。

おいしい餃子の焼き方

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